「サムライブルーの勝利と敗北」を読んだ。

五百蔵容著「サムライブルーの勝利と敗北」を読了したので感想文。

前著「砕かれたハリルホジッチ・プラン」に続き、五百蔵さんの新刊を読んだ。
前著はロシアワールドカップ前に書かれたのに対して、今回はロシアワールドカップ後に書かれており、「ロシアワールドカップを通して見えてきた、今の日本サッカーの立ち位置」について述べられている。

ロシアワールドカップも結果だけ見れば、「直前で監督が解任されたにもかかわらず、下馬評を覆して決勝トーナメントに行けた。良かったよかった」と感じる。
ただ、この本を読むと「確かに結果的に上にはいけたが、果たしてその結果は今後の日本のサッカーの発展につながるだろうか」という疑問が湧いてくる。

そもそも、今回のワールドカップで11人対11人で勝てた試合は一つもない。
コロンビア戦は開始直後に相手が1人退場して10人になり、そこでなんとか勝利を収めた。
それ以降の試合は引き分け・負け・負けと、確かに惜しい場面はあったものの勝ててはいない。

これこそが今の日本のサッカーの現状であり、これをきちんと認識することが大切だと五百蔵さんは書いている。
育成年代から旧来的な「フィジカルで勝てない分を、足を使った頑張りとチームワークでなんとかする」という考えでは、そろそろ限界が来ている。
世界中が「走力を含めた一定以上のフィジカルであったりチームワークであったりを前提とした戦術」を構築するようになってきたので、今のままの日本のサッカーでは今後世界の壁を超えられなくなってくる。
そのために、より世界基準の戦術やプランを練り上げ、1対1や攻め込まれた場面でも対処できるフィジカルや組織づくりが必要。
これは前著「砕かれたハリルホジッチ・プラン」から変わることのない主張だ。

五百蔵さんの本は読んでいて非常に納得させられる。
単純に「〇〇という選手のプレーが良かった」「あの場面の〇〇の動きが敗因だ」という書き方ではなく、きちんと順を追って展開を説明し、場面場面において誰がどこにいてどう役割を果たしていたかを浮き彫りにする。
その中で、効果的に動けていた選手やそうでない選手、またチームとしての戦術や選手間の連動性を明らかにしながら解説してくれるので、読んでいてとても腑に落ちる。

今回のワールドカップでは、実際の試合も見ながら五百蔵さんの本を読み、サッカーについて色々なことを知れてよかった。
基本的には「見る」専門だが、今後も日本や世界のサッカーに注目していきたい。